ボードゲームとカラーユニバーサルの話 ーカラーユニバーサル編ー
さて、前回は色覚多様性とは何か、広まったり広まらなかったりするといいなと言う話でした。
今回は続いて,カラーユニバーサルとはなんぞやという話をしていきたいと思います、ぼーらです。ちょっと資料のイメージを各所に掲載確認している時間なかったため,文字多めですが,どうぞお付き合いください.
カラーユニバーサルデザイン
早速本題。
ずっとカラーユニバーサルと言ってましたが正しくはカラーユニバーサルデザイン。
「カラーユニバーサルデザイン」とは簡単に言うと、皆さん名前は認知してるであろう「ユニバーサルデザイン」の、「色覚に配慮した版」。
そもそも「ユニバーサルデザイン」とは
“すべての人が人生のある時点で何らかの障害をもつ”ということを、発想の起点
としていて、
障害の有無、年齢、性別、国籍、人種等にかかわらず多様な人々が気持ちよく使えるようにあらかじめ都市や生活環境を計画する考え方
です。(参考︰UDCユニバーサルデザイン・コンソーシアム|ユニバーサルデザインの理念:バリアフリーとは発想の起点が異なる)
この上で,色覚多様性は前回話した先天的なものだけでなく,病気や老いによる後天的なものも存在し,「カラーユニバーサルデザイン」とはそのような色覚に対して,
人間の色覚の多様性に配慮し、より多くの人に利用しやすい配色を行った製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方
と定義されています.(参考:CUDとは – 多様な色覚に対応したデザインと社会の改善 特定非営利活動法人カラーユニバーサルデザイン機構CUDO)
ちなみにこれを最初に定義したのは恐らく参考リンク先のCUDO(Color Universal Design Organization)とされているはず.名探偵ではありません.
カラーユニバーサルデザインマーク(↓の左のアイコン)は,このCUDOに申請すると審査してもらえるようです.ただ,検査にもそこそこ費用がかかるようで,現状でCUDマーク持ちの製品・商品に意識して出会ったことはない気がします.通常のユニバーサルデザインに比べて浸透していないのがわかります.
そのためか,トライアルCUDだとか,CUD検証の無料説明会なんかも定期的に開催されているようなので,ゲーム制作でイラスト以外の要素で色分けがあるゲームを作っている方は,足を運んでみてもいいかもしれません.
CUD検証・マークの表示 – 多様な色覚に対応したデザインと社会の改善 特定非営利活動法人カラーユニバーサルデザイン機構CUDO
ただ,私が気づいていないだけで,CUDは街の景観の中に既に適用されているものがあって,無意識のうちに遭遇しているかもしれません.ちょっとタイプは違いますが,東京メトロの路線分けのアイコンがもともと色のリングだけだったのが,中に頭文字を入れて対応したり,路線図は色弱者対応をしたりしています.
カラーユニバーサルデザインガイド CUDの具体例(路線図)です - 福島県ホームページ
これは余談ですが,色んな所で,「カラーユニバーサルデザイン」と「色覚バリアフリー」って言葉が同時に使われてたりするのですが,「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」って,発想が違うので一緒にしてはいけないと思うのですが,どうなんでしょうか.皆さんの意見も欲しいところですが.
CUDガイドライン
さて前項のカラーユニバーサルデザイン(CUD)を各自治体や団体ごとに反映させるために,それぞれでカラーユニバーサルデザインガイドラインというものが作られています.いかに例を幾つか示します.
東京都:http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/machizukuri/kanren/color.files/colorudguideline.pdf
鳥取県:http://www.pref.tottori.lg.jp/secure/954753/CDU01_CUD20.pdf
川崎市:http://www.city.kawasaki.jp/170/cmsfiles/contents/0000024/24002/cud_guide.pdf
埼玉県:
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0305/documents/ud_saitama.pdf
他にもあるので気になる方は,自分の都道府県のCUDガイドラインを探してみてはいかがでしょうか.
また,東大の研究所からCUD推奨配色セット なるものも開発されています.
これは,「この色を使えばCUDだ」というもので,(Q&A欄にもありますが)ここに乗っている色使いをしていないからCUDじゃないというものではないので,息苦しく感じないでほしいです.これ使っときゃ問題ないんだな,程度の認識で.
さて,これらのガイドラインは,目的によって構成が少し違ったりして,それぞれ非常に配慮の行き届いたわかりやすいものだなと,当事者ながらに思います.
ですが,ほぼ全ての1つだけに苦言を呈したいのは,かならず序章のあたりに記載されている,「具体的な見え方」のところ.
一般色覚者と色覚異常者で分けて色の記載があります.私色弱ですけど,一般色覚者の色はほぼ見分けられますし,色弱者の例としてあげてある色がおかしいこともわかります...(紫は見分けられませんがw).P型(1型)といってもL錐体がないか,機能不完全かの違いで,見え方がそこそこ変わってくると思いますし,ガイドラインの序章なのでそのあたりを省いた結果という感じなのでしょうか.
また,この原因はただのカラーパレットを白で間をつけて並べているだけだからもあると思うんですよね.色の識別って単体で並べられるよりも,周辺色との関係で識別がより複雑化している印象が体感としてあるため,ただ並べられたものを用意されても...という気持ちになってしまいます.
個人的には,もっと背景色や周辺を取り囲む色,間に挿入されているとの関係を記述してほしいなあというところです.
この点で鳥取県のものは注釈で「色弱者の見え方を完全に再現したわけではない」って書いてあるのは嬉しいです.
ボードゲームにおけるCUD
ではここで,やっとタイトルに関連しそうなことを書けるかもしれません.
ここまで,色覚多様性について理解していただいて,カラーユニバーサルデザインが何たるものかをスッと触れてもらいましたが,ここでこう思う人が当然いらっしゃると思います.
「ボードゲームはイラスト多用するから,CUDに全部配慮するの無理じゃん?」
僕もそう思いましたが,そうではないんですよね.極論を言えばイラストってボードゲームにおける最も強烈なフレーバーですよね.フレーバーに(メカニクス)デザインは必要ないでしょう?
こう言うとイラストレータの方から顰蹙を買いそうですが違うのです!誤解しないで頂きたいのは,カラーユニバーサル「デザイン」とイラストの「デザイン」って違うということです.
design
【不可算名詞】(機械・建築などの)設計
【可算名詞】図案,下絵
(weblio英和辞典より)
CUDは前者,イラストは後者の意味です.まあだって,絵を書くのにCUDとか気にしてたら,正直埒あかないし,芸術は感受者によって解釈は変わるもので,色覚が多様性を持つなら,その分イラストの解釈も多用にあってしかるべきだと思うのです.
つまり,メカニズムの段階での色にはCUDを適用してくださいね(願望)ということです.例えば,カードスートや資源やプレイヤーなどの分類ではCUDに気をつけて色を選んでいただけると,それだけで我々は気持ちよくプレイできます.いろんな都合でどうしてもCUD配慮の色の組み合わせが難しい!という場合は,色だけでなく形を変えるなどの工夫があると泣いて喜びます.
なんやかんやガイドラインがどうのだとかめんどくさそう…という気持ちもわかりますが,あの…想像以上にボードゲームへのCUDの適用って簡単だと思うんですよ.
カード,資源,プレイヤーなどカテゴリーの違うものでは色かぶりしても,形が違うのでオッケーですし,カテゴリー内での分類も多くてたかだか6色程じゃないですか?(もし7色以上の同型コマを扱うゲームが有りましたらすみません...)
6色なら前述の推奨配色の「赤,黄,青,緑,白,黒」などアクセントカラー+白黒を使えば代替対応できるので,とっても簡単!(大声)
あとボドゲアクセサリ系ですが,芸術品として上記後者の用法でのデザインが多分に入っているので,制作の段階で色を制限はしないでほしいです.私だって虹色の青藍紫の識別が難しいからって,虹に怒ったりしません.ただし,販売・展示の段階でちゃんと各色ずつ区分して何色って表示して頂ければ,何も問題ないのです.
青色のセーターと思って紫色のセーターを買っていて,友人に派手すぎるやろと言われる悲しい事件は私だけでいいんです!笑.(もちろんこのアンダーラインも青か紫かわかりません.もしや紺...?)
これに関して,購入時に色の確認すれば良くない?という意見もあると思いますが,私の実体験としては,それはキツイですね.
まず,ざっと見積もって色覚多様性に適合する人は20人に1人と考えると5%のために,全員に確認してもらうのは労力が半端ないし,色弱として申し訳無さすぎる.加えて,確認されて違った時のあの微妙な気まずさ,耐えられないです笑
このため,ぜひ「商品に色表示」浸透していくといいなと思います.
では最後に,今回覚えていってほしいこと.
①コンポーネントの色分けは,CUD推奨配色を!
②カテゴリ・形違いのコンポーネントの色かぶりはOK!
③カラフル商品群は明確な色表示を!
おかげで,私の世界もちゃんとカラフルになります.
今回はいつにもまして見にくかったかと思いますが,読んでいただきありがとうございました.
余談
色確認時の「気まずさ」について,最近いいエピソードがあったのでそれを1つ.
ついこの間とあるライブの物販で起きた小さな悲劇ですが,7色のグッズのうち4色を購入したくて,見本を指差して「青とピンクと黄色と赤ください」といったのですが,店員さんが困った感じで何度も見本を見ているからどうしたのかなと思っているとどうやら,僕が欲しくて指差していたのは「藍色,紫,黄色,赤」だったようで,確認されて受け取ったときの私の顔はきっと哀愁漂うものだったでしょう笑.